夢子のホテル大好きシリーズ

乳頭温泉郷「鶴の湯温泉」

 乳白色の湯が首の下からすっぽりと隠している。湯の中でゆらゆらと手を動かしても見えな

い程乳白色が濃い湯だ。少しヌルメで、風呂の床では丸い小石が優しく足にあたる。風呂として

はかなり深い。そして広い。空を見上げれば、湯の色よりずっと暗い灰色の雲が、暮れるまで僅

かの時間だと教えている。紅葉には未だ早いのだが、露天風呂の周囲には、ススキの穂が揺れて

秋の風情を演出している。「黒湯」の奥の女性専用露天風呂。あぁ、ここが何年も来たかった乳

頭温泉の鶴の湯だ。何時間かけてやって来た温泉でも、カラスより短いと言われる「超短行水」

の自分だが、今日は長めに浸かっていようと決めた。やっとこの湯に入れたのだし、何より気持

ちが良過ぎるから。

 何年前だったろうか、乳頭温泉郷に行きたいと思い電話を掛けまくった。先ずは鶴の湯温泉。

予約は取れなかった。妙乃湯温泉もいっぱい。大釜温泉もダメ。蟹場温泉も孫六温泉そして黒湯

温泉も予約は取れず・・・。1ヶ月半前の予約では、乳頭温泉郷はどこも取れないのだ。確かに

温泉マニアではなくても一般の人々にも秘湯として名前は知られ始めてはいたが、これほど混雑

しているとは思ってもいなかった。残念の気持ちより驚きの方が強かった。結局その時は、田沢

湖湖畔のホテルに泊まったのだが、宿泊した翌日、田沢湖駅に向かうタクシーの運転手さんに乳

頭温泉のことを聞いてみた。

「昔は、はぁ、土地の人間が湯っこさ入りに行っていたども、近頃は秘湯ブームっつうことで、

東京の本に書かれだってゆうてさ、んまぁ若い女の客がどんどんどんどん押し寄せて来でな。聞

げば露天風呂の混浴でも若い女の人がぱっぱらぱ〜って湯さ入っでぎて、男どもがたじろぐって

さぁ。ま、お客さんでいっぱいになるのはよろしいことではありますな、は〜い。」

以来、乳頭温泉は遥か遠い存在になってしまった。仕事を持つ身では、数ヶ月先の予約をする

のは難しい。だいたい1人旅だから余計に敷居が高いように思えた。ところが、思わぬことで鶴

の湯温泉の予約をしていた人達に誘われて、来ることが出来た。嬉しい。ほんとウレピー。

山の中の秘湯一軒宿

 国道341号線を右折するとやがて道は上り坂となりぐんぐんと高度を上げて行く。スキー場

がいくつか見える。冬場はスキー客で賑わうだろうリフトも今は山の壁面に止まったまま。田沢

湖高原温泉郷には何軒もの宿がある。くねくねと曲がった道を上っていくと、「鶴の湯入り口」

のバス停があり、車は左折する。国民休暇村や妙乃湯など乳頭温泉郷へ行くにはまっすぐ進めば

いい。道幅は細くなり回りの木々が鬱蒼としている。この当りからカール・ツアールドイツ大使

が絶賛されたことから名付けられたというツアールの森が始まる。右手に「鶴の湯別館山の宿」

が見えて来た。曲がり家作りで全9室のこぢんまりとした宿。ここを過ぎれば鶴の湯の本館まで

1キロだ。鶴の湯本館が見えて来た。何度も写真やテレビで見ているので初めて来た気がしない。

何やら映画のセットのようにも見える。駐車場を真ん中にして左手には湯の神薬師如来を祀る

「鶴の湯神社」の鳥居、右手は茶舎で「コーヒーとお茶をどうぞ」とある。車を降り立った途端

に硫黄が匂う。入り口の右手には水車が回っている。

鶴の湯神社 左:湯治棟 右:茶舎

コットン水車が回って

 「秘湯鶴の湯温泉」の門をくぐると左手に萱葺き屋根に黒塗りの長屋、本陣が延々と続く。江

戸時代藩主の湯治の際、お伴の警護の士がこの本陣長屋で詰めていたのだとか。全室囲炉裏が切

られていて、食事はここで取る。トイレも洗面台も無いが、ランプの灯りや昔の情緒が味わえる

と、この宿の一番人気なのだそうだ。以前は板張りだったと聞くが、今は畳が敷かれている。押

入れが無くて寝具は奥に畳んで積み上げられているが、きれいに整頓されているのですっきりし

た感じがする。右手は自炊棟の二号館と三号館。昔々田植えを終えた土地の人々にとって、山を

登って鶴の湯に湯治に来るのが何よりの楽しみだったという。本陣棟の奥が事務所になっていて、

旅館の帳場の役割と小さな売店が併設されている。入り口の右隅では、川の水が冷たいのだろう、

飲みものを引いた水で冷していた。事務所の裏手に一号館、昭和62年完成した新本陣と平成元

年に出来た東本陣の客室がある。自炊棟の奥は小さな広場で湯上がりの休憩所だ。湯の沢にかか

っている橋を渡った正面に黒湯、白湯、中湯が続く。これが大雑把な鶴の湯全体の構造である。

本陣 自炊棟

本陣内部 飲み物の冷し方

 私の部屋は事務所棟の裏手、長い渡り廊下の奥の東本陣3号室。渡り廊下の下には湯の沢の渓

流が音を立てて流れている。左右がガラス戸で木々の緑が美しい。一号館の右手に内湯に続く廊

下があったが廊下の途中左手を覗くととても小さな可愛い露天風呂が見える。案内の方に伺うと

一番新しく作ったお風呂とか。風呂のすぐ下は湯の沢の川で、夏だったら川に入って遊び、すぐ

温泉に浸かって温まったり出来るのだろうな。但し男性に限りますね。私にはそんな勇気はない。

この湯の沢は少し下流で赤沢となり、先達川(せんだつがわ)に合流し、やがて玉川になる。さ

て東本陣3号室。8畳間の和室で窓側に応接セットや鏡台、洗面台のある板の間がある。木製の

電話がセンスを感じさせる。テレビが無いのもいい。トイレは水洗で驚くことにシャワートイレ

なのである。先程見て来た本陣のほのぼのとした素朴で質素なたたずまいを見て来たから意外だ。

後刻ご主人の佐藤社長に伺ったら、この鶴の湯にはいろいろな要望を持った方がいらっしゃるの

で、出来る限り要望に応えられる努力をなさっているのだとか。かつては電気も無い、水道も無

い、電話も通じない、雪が降れば半年も道が閉ざされてしまう山深い場所で、大変な努力をされ

て来たからこそ、この充実した宿があるのだと素直に感謝する気持ちになる。同行の男性陣の部

屋5号室は2間続きの立派な部屋で、手前の部屋には囲炉裏が切られており、夕食はそれを囲

んで取る。

渡り廊下 川沿いの小さな湯

       

中段5点3号室、下段5号室

鶴の湯温泉めぐり

 鶴の湯には泉質の異なった6つの源泉がある。鶴の湯のシンポルとなった混浴の露天風呂、中

の湯の奥には女性専用の露天風呂と滝の湯がある。白湯、黒湯とその奥に女性専用の露天風呂、

一号館から廊下で渡ったところに内湯。川沿いの湯は7つ目なのかどうかわからない。

中の湯/「眼っこの湯」とも呼ばれ、神経系統の病気や眼病に効き目がある。泉質は含重曹・食

塩硫化水素泉で、浴用の適応症は高血圧症、動脈硬化症、リユウマチ、糖尿病、皮膚病に、飲用

適応症は糖尿病、慢性中毒、リユウマチ、通風、便秘など。写真で何度も見た大きな露天に入り

たいが、やっぱり混浴は入りずらい。誰もいない時に写真を撮っただけで入るのは諦める。中の

湯に入り、外の露天に行くと草の中から管を通って湯が流れ込んでいる。少し離れたところに滝

の湯があり、置かれた椅子に座って肩や頭に打たせ湯の形で浴びる。滝の湯の傍に戸があって、

鍵を開けると隣の大きな露天風呂に続いているのだが、やっぱり入れない。チェックインを仲間

に任せて周囲をきょろきょろしている時、混浴の露天からバスタオルを巻きつけただけの女性が

2人堂々と出て来た。ハラリとタオルが落ちたらどうするんだ、などということは全く心配して

いない悠々と胸を張っての姿勢に恐れ入った。2人のうち1人は頭にシャワーキャップまで被っ

ているではないか。たくさんの風呂をあの格好で回れば確かに効率はいいわね。実際に水着を着

て入っている女性は見かけなかったが、ここ鶴の湯では「バスタオルを巻いての入浴はご遠慮く

ださい」とか「水着なんか着るんじゃないぞ、禁止だ」なんて表示はどこにもない。一切ない。

だからって、今度来る時には水着を持って来ようとは思わないが、女性の心理を理解しているな

ぁと感じる。でも温泉好きには水着やタオル着用を嫌がる人がいるとも聞く。湯が汚れるとか風

情を壊されたくないという理由だろうが、幾らかは見る立場の横暴や欲望も入っているような気

がしないでもない。ここは、‘92年ブルーガイドの温泉100選の「露天風呂の部」で第1位

になったのだそうよ。

 

巨大な混浴露天風呂 右端はその夜の顔

中の湯、露天風呂 滝の湯

黒湯/「子宝の湯」で別名「ぬくだまりの湯」というのだそうだ。湯冷めしないので不妊症や神

経症に効くらしい。青みがかった湯の色は天気が悪いと黒くなり、逆に晴れると白くなるので天

気を占える湯。今年の2月に別府・鉄輪温泉の「神和苑」で透明の湯が青乳色に変わる温泉に入

って来たが、天気で湯の色が変わるとはねぇ。泉質はナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉、浴用

適応症はささりキズ、火傷、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病、飲用適応症は慢性消化器症、

慢性便秘など。この日の湯の色は何色だったかって? それが夕刻だったので暗くてよく見えな

かった。この黒湯の奥に、冒頭に書いた女性専用の露天風呂がある。ヌルメの湯だが、板の間を

挟んだ小さな湯船に移るとかなり熱い。女性のみなさん、あの中の湯の混浴露天風呂に入れなく

ても、ここも十分気持ち良いですよ〜。「子宝の湯」に入ったのだが今のところ妊娠の兆候はあ

りません。ハハハ。何人も入浴中だったので露天風呂の写真はほんのちょっとだけね。

黒湯 

白湯/「美人の湯」で別名「冷えの湯」。泉質は含硫黄−ナトリウム・カルシウム−塩化物、炭

酸水素泉(硫化水素型)、浴用適応症は高血圧、動脈硬化症、慢性皮膚病、慢性婦人病に、飲用

適応症は糖尿病、痛風、便秘などに効く。妊娠はしなかったが「美人の湯」で更に美しさを増し

たことは言うまでも無い。へへ。

白湯  更衣室の竹の床

内湯/源泉が同じかどうかはわからないが、ここも白湯。日帰り客に他の湯は開放されているが、

ここだけは宿泊客のみが利用出来る。ハンド型のシャワーが付いていて、温泉に入るだけでなく

身体を洗ったり洗髪したりする時はこの内湯を利用出来るようにとの配慮のようだ。温泉旅館に

来ていつも思うのは、部屋に薄い小さなタオルしか備えていないこと。一番バスタオルが欲しい

場所にそれがないことを長年嘆いている。鶴の湯では、部屋には同じように小さく薄いタオルし

かないのだが、事務所で「バスタオル貸してください」と言えば黄色のタオルを貸してくれる。

ドライヤーもね。スグレサービス。他の宿も鶴の湯を見習って下さい。因みに日帰り入浴は午前

8時から午後5時までで400円という安さ。宿泊した夜興奮していたのか朝方まで眠れずに午

前4時半に内湯に来た。ランプが1つぽつんとついているきりで暗かったので諦め、明るくなっ

てから入り直した。

人間、温泉に浸かるとなぜか「ぷわ〜っ!」と感嘆のうめき声を上げる。1泊2日で7回もこ

の「ぷわ〜っ!」をやってしまった夢子であった。

内湯  日帰り客の案内

素朴で豊かな食事です

 囲炉裏端で賑やかな夕食が始まった。既に囲炉裏の炭火の周りには人数分の化粧塩をされた岩

魚が串に刺されて焼かれている。やがて年季の入った朱色の漆塗りの膳が運ばれて来て、山の幸

が並んだ。きのこ、ぜんまいやミズなどの山菜、川魚、そばなどを素材とした素朴な料理ばかり。

それがいい。山里の鄙びた宿で、鮪の赤身やズワイ蟹の足などが出て来て鼻白むことが何度もあ

ったが、鶴の湯では土地のものだけで勝負していて気持ちがいい。一見地味な料理は毎日食べて

も飽きが来ないし。酒が進む。ビールを注文すると銘柄を聞かれて驚かされたが、続いて冷酒、

社長からの差し入れの地酒。酒が気持ち良くカラダに回った頃、お待ちかねの名物「山の芋鍋」

が囲炉裏の炭火で熱くなっていて「早く食べて」と言っている。「おうおうそうか」と銘々に配

られた器から汁を飲む。あぁ胸に、腹に沁みる。「山の芋鍋」は田沢湖町全体の名物料理になっ

ていて、名前は同じだが味付けや材料などはそれぞれ違うのだとか。山菜やきのこの具に団子状

になった山の芋が入った味噌味の汁には薄っすらと油が浮いていてコクがある。鶴の湯では豚肉

が入っているのだ。山の芋は案外歯応えがあってシコシコしている。プッハ〜。うまいなぁ。酒

を飲んでいるのに、この汁を飲むとヤケにご飯を食べたくなる。で、2杯食べて、また酒を飲む。

乳頭温泉を特集した「旅の手帖」(弘済出版社)9月号に寄ると、昭和55年頃田沢湖町にある

旅館の板前さん有志の会「包和会」名物料理を模索した結果「山の芋鍋」が誕生したとある。山

の芋は当初自然薯を使っていたが、量が少なく高価なことから、同県の大館市の山の芋を栽培し

たら自然薯に近い味になったのだとか。名物料理であっても、醤油味、味噌味、入れる肉も鶏、

豚、合い鴨と宿ごとに色々あって、板前さんの腕の見せ所なのだそうである。「山の芋鍋」は秋

から春にかけてなら毎晩でも食べたい味である。前述の温泉100選の「名物料理の部」の第2

位になったというのも頷ける。

  岩魚

名物「山の芋鍋」

 朝の食事は、朝7時から8時半までの間に何箇所かに分かれて食べる。私達は、1号館1階の

広間で頂く。いくつかの部屋の客が一緒に朝食を共にするのだが、どのグループも清々しい穏や

かな表情で食卓に向かっている。良い湯に入って熟睡した顔だ。おっ!向こうの端でパクパク勢

いよく食べているのは、昨日のバスタオル堂々行進の女性2人組ではないか。食事中も胸を張

って姿勢を正しくておられます。そんな中で腫れぼったい目で赤い顔して未だ酔っている途中の

ような人は私の連れの男性陣だけだ。情けない。豆腐、納豆、焼茄子、なめこおろし、梅干、川

魚の甘露煮、牛蒡サラダ、漬物などがお膳に並んだ。私も1〜2時間しか寝ていないが二日酔い

ではないのでご飯をしっかり2膳も食べてしまう。素直に食が進む朝ご飯なのだった。

食事処と朝食

鶴の湯360年早わかり

 鶴の湯の歴史は古い。乳頭温泉郷では最古の出湯と言われ、鶴の湯由来記の伝承に寄れば寛永

15年(1638年)に二代目秋田藩主佐竹義隆が鶴の湯(当時は田沢の湯と呼ばれていた)に

湯治に来られた。その後元禄時代の1701年、田沢村の六衛門とその息子太左衛門が湯守とな

って、一般湯治客を相手に湯宿を始めたらしい。以来その末裔の羽川家が13代目まで鶴の湯を

経営して来た。身分が高いとか裕福な人は馬で来るが、たいがいの客は自炊用の重い荷を背負い

長い時間をかけて登って来ざるを得ない。難行苦行は避けられない。それでも地元の人々は荷を

担ぎ山を登って鶴の湯に来た。人気があった。しかし長い間には、この地区全体を何度も襲った

凶作や景気の低迷、戦争、時代の流れの変化などに浮沈を重ねる。そして昭和56年13代目羽

川健治郎氏が、高齢のため現社長の佐藤氏に経営を委ねた時から、鶴の湯は大きな変貌を遂げる

こととなった(らしい)。

 佐藤和志氏。建築請負業の父・五郎氏が、廃屋となって放置されたままだった乳頭温泉郷の1

つ大釜温泉の地上権を借りて客舎を建て直す。「温泉をやることが夢」だった五郎氏だが、しか

し直接の経営は、東京でサラリーマンをしていた和志氏が呼び戻されてこれに当ることになる。

昭和44年のこと。初めはほとんど客も来なかったが、乳頭山の登山客のための「温泉つき山小

屋」のコンセプトで大きな露天風呂を作ったことから客が増え始めた。順調な数年が経った昭和

54年宿泊客の心中未遂事件のとばっちりで大釜温泉は焼失。「山を下りよう」と失意のどん底

にあった佐藤氏に全国の山小屋ファンから激励の手紙やカンパが届き、思い直して再建すること

にした。客舎も温泉も作り直し営業を再開してやれやれと思っていたら、今度は大家に明け渡す

ことになってしまう。そこに13代目羽川健治郎氏が佐藤氏に経営権委譲を申し出たという、ま

るで「ドラマ」のようなお話。佐藤和志氏は、この時34歳。

 長い歴史を持つ由緒ある鄙びた鶴の湯。電気も電話も無い。象徴的な本陣の建物は土台も傷ん

でいる。麓からの道は細く路肩もところどころ崩れ、半年は雪で閉ざされてしまう。さて、譲り

受けた鶴の湯をどうしたものか。佐藤氏は考えた。結論は「現状維持だけでは若い人を呼ぶこと

は難しい。本陣はじめ素朴なたたずまいを生かしながら、清潔で若者のグループも気軽に泊りに

来るような温泉にしたい」『鶴の湯温泉ものがたり』(無明舎出版)より。うん、それが良かった

のよね〜。まずはトイレの水洗化、水車による水力発電(その後ディーゼル発電機に。今も水車

は回っている)で無線電話や共用部分の電気を賄えるようになった。本陣の手入れ、新本陣・東

本陣の建設、風呂の拡張、道路の整備、送迎バスの購入。苦労を重ねた分幸運もあった。風呂の

拡張の時に新たな源泉から湯がこんこんと湧き出て露天風呂を作ることが出来た。鶴の湯の魅力

が一挙に増した。名物料理も出来た。平成6年には半年豪雪で閉ざされる道の除雪を日に何度も

行って通年営業に漕ぎつける。別館「山の宿」も作った。そして今、最も予約が取りにくい大人

気の鶴の湯となった。35室。こんなに混んでいても、1泊2食8千円からと値段も安く、1人

の宿泊も受け入れてくれる優しい宿である。

   

 その佐藤和志さんと夜の食事の時に少しと翌朝お話する機会があった。ご自慢のテレホンカー

ドに纏わるお話がとても面白かった。腰が低く、朴訥として、人柄の良い「真面目」をお顔に描

いたような佐藤社長だが、その時だけはちょっとお茶目な表情で「うちが初めて作ったテレカは、

日本で初のフルヌードだったんですよ」ってね。「最初は全く出なかったのに、テレカのランキ

ングみたいので上位になってマスコミで紹介されたら、アッと言う間に売れて売れて。何でもテ

レカのオークションでは高値で取引きされたそうですよ。フルヌードって言っても、ほら、こん

なに上品でしょ? じゃ第2弾ということでこっちを出したら、ちょっと刺激が強かったようで

あまり出ませんでしたねぇ。私は、この雪景色の写真が好きなんですよ」。ご自慢のテレカ何種

類か頂きました。ありがとうございます。

 

   最初のフルヌード?黒湯の女性専用露天  鶴の湯雪景色         1200円です

 多分各部屋にあるのだろう、よろず帳。東本陣3号室のよろず帳には「神戸から車で3日かけ

て鶴の湯に参りました。定年退職してからの夢でした。そんなに時間を掛けても、来て良かった

と思います。また寄らせてください」とあった。私も同じ気持ちである。また行きたい。

                                                おしまい

泊まった日/2001年9月      乳頭温泉郷「鶴の湯温泉」

014-1204 秋田県仙北郡田沢湖町先達沢国有林50

電話:0187-46-2139  ファックス:0187-46-2761

交通:JR「田沢湖」駅から車で40分 同駅からバス鶴の湯旧道口下車、徒歩45分

                     〃   田沢湖高原温泉バス停から送迎有り 

 

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